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【呪術廻戦】-5歳で五条家に来ました-

第6章 キスの味


 悟くんの手が伸びてきて、それはあたしの頭の後ろに添えられた。悟くんがゆっくり顔を傾けて近づいてきて、自然と目が閉じかかる。

 悟くんが何をしようとしているのかは知っている。ほんの数ミリ。唇と唇が触れ合う手前のほんのわずかな数ミリの距離まで来た時、急に彼の動きが止まった。

「やめやめ」
「……」
「来年まで待つんだろ? 全然俺は納得いかねーけど」

 悟くんの声にハッとして、顔を離して初めてあたしは悟くんがキスしなかったんだと理解する。

「寝るから早く出て行って」

 悟くんが背を向けた。あたしはまるで魔法にかけられたみたいにしばらく固まっていたけど、状況がわかると、慌てて「うん」って返事して部屋を出た。

 自分で自分が信じられなかった。完全に流されてた。あのまま悟くんがキスしてたらどうなっていただろう。

 思いの丈が溢れてそのまま彼を求めてしまったかもしれない。頭の中では1年半待つべきだってわかってるのに、こんなの不道理だってわかっているのに。抑えられない衝動。好きっていう気持ち。

 空き教室で返事をした日「俺なら我慢できねーけど」って悟くんは最後に告げて教室を出たけど、我慢出来なかったのはあたしの方だ。

 悟くんは、多分キスしたかったと思う。あたしが誘ってしまったんだと思う。だけどギリギリで、本当にギリギリのところで、踏みとどまった。

 「納得いかねー」って言いながらもあたしの返事を、来年まで待ってって言った言葉を大事にしてくれた。考えは平行線のまま変わっていないはずなのに。

 もっともらしい事言って、1年半待つなんて優等生みたいな回答して、自分から付き合う事に距離をおいたくせに、内側から湧き出る衝動に我慢出来なくて、悟くんと距離を詰めて、挙げ句の果てに、彼の方から離してもらうなんて、あたしは本当に最低だ。

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