第5章 いざ高専へ
あたしが口を尖らせたのを見て、悟くんが笑うからつられてあたしも笑う。
前に歩いてる家入先輩がちらっとあたし達を振り返ってにこりと笑い、また向き直る。
やだ、なんか2人の世界作ってしまってる? 悟くんはそんな事、全く気にせず、カラオケに1年男子が何を歌ったかとかそんな話してる。
後ろを見ると少し離れたところに夏油先輩達が歩いてる。周りを見るとすれ違いざまに知らない女の人達が悟くんやあたしを見ていく。
2人で並んで歩いてるのが急に恥ずかしくなって、少し悟くんと間隔を空けようと左に移動した。だけど話しにくいだろって言って彼は左に詰めてくる。さらにあたしは左に移動。また詰められる。
――ちょっと!!
ガードレールギリギリまで来たから、あたしは悟くんの反対側の右隣に回った。
「なにしてんの?」
「悟くんの隣ってじろじろ見られるし、ちょっと離れて歩いて」
「は? やなこった。別に見られてまずい事なんかねえだろ」
「甘いじゃん、なんか」
「どこが? 別にキスしながら歩いてるわけでもねーし」
「シーーーッ聞こえるから! キスとか論外!」
「いちいち反応でけーわ、ガキかよ。好き同士なんだから隣で歩くくらい普通だろ」
「すきどうし?」
「違うの? 俺、夕凪のこと好きだけど。付き合ってんじゃねーの? オマエは俺の彼女だろ?」
……。
ちょっと待って、待って待って悟くん。頭を整理させて! 今、なんて言った? 好きって言った? 付き合ってるって彼女っていつから?
そうなのかなって思わないこともなかったけど、そんなハッキリいつ確定したの? 誰かに聞かれてないか思わず前後左右を確認する。