第5章 いざ高専へ
そうこうしているうちに、カラオケの時間も終わりを迎え、高専へと戻る事になった。カラオケの建物から外に出ると男子チームもちょうど歌い終えたようで群がっている。
七海も灰原も最後まで新歓に参加したようだ。七海は悟くんに肩を組まれてる。全然違うタイプだけど仲良くなったのかもしれない。
夜の都会の雑踏の中ぞろぞろと歩く。補助監督さんが車であたし達を迎えに来るらしく、指定された場所に向かう。
あたしはそこがどこなのか知らないから、前にいる先輩達に付いてぷらぷらと歩いた。
ガードレールを挟んだ左側は大通りに面している。3列に並んだテイルランプの赤い光が着いたり消えたり着いたり消えたり。渋滞はかなり先まで続いているようだ。
右隣に悟くんが並んで来た。
「どうだったー? 新歓」
「楽しかったよ」
「だろ? 高専来てよかっただろ? 俺の言うとおりだったろ?」
カラオケで悟くんの最低話がたくさん出て来たのが一番楽しかったとは口が裂けても言えない。あたしは、思い出し笑いしながらそうだねって答える。
「ひとり不快な奴いたけどな。あいつはもう二度と呼ばねー」
悟くんはまだ直哉さんのこと怒ってるみたいだ。
パァーンと横からクラクションが鳴り響く。
「あたし、五条家で良かった。悟くんはいじめっ子だったけど、今思えばあたしがどうしようもなくなった時は優しかったし、遊ぶ相手が禪院家の坊っちゃんじゃなくて悟くんでよかった」
「なに? 最後んとこよく聞こえなかったけど」
「だから……遊ぶ相手が直哉さんじゃなくて悟くんでよかった、って」
「誰でよかったって?」
「悟くんで……ってもう、絶対聞こえてるでしょ!」