第5章 いざ高専へ
「直哉には今すぐ新幹線で京都に帰ってもらうがね」
低音で太い夏油先輩の声が響き、と同時に、夏油先輩から呪霊が放たれた。
わっ! なに?
初めて呪霊操術を見た。
あれよあれよと直哉さんはその夏油先輩の出してきた呪霊に包まれて、そのままお店の中から外へ、そしてどこかへ消えてしまった。おそらく東京駅だろう。
「一件落着だな」
夏油先輩が軽く口元を緩めて切長の目が優しく光る。これはモテる。下着をプレゼントする相手が4人になっていてもおかしくない。あたしは軽く会釈した。
「おい、傑、いいとこ取りすんな」
悟くんは面白くなさそうだ。あたしは悟くんに向かって微笑んだ。嬉しかったよ、助けてくれて。
「ありがとうございます、五条先輩」
「おぉ……」
こんなの誰が見たってなんてことない普通の会話。ただの挨拶。でもこれはあたしにしたら大きな一歩だ。
こういう悟くんの優しさに対して今まで素直に気持ちが言えなかったから。気付かない事も多かったから。
夏油先輩も粋だけどあたしは悟くんが好き。そう言いたいけど、さすがにそんな事言えず、あたしは精いっぱいの笑顔を見せた。
悟くんはそんなあたしに満足そうな顔をしている。やっぱりお盆の日を境に2人の関係は少し変わったのかもしれない。
「五条といい感じじゃん」
「はい?」
あたしの肩に顎を乗っけて家入先輩が手をひらひらさせてる。
「詳しくはカラオケで聞かせてもらおっか。行くよぉ尊」と家入先輩に腕を組まれあたしは焼肉店から拉致されるようにカラオケ店へ連れ込まれた。
二次会だ〜。