第5章 いざ高専へ
「そんな驚かんでも。彼なら夏油って奴のとこ行ったわ。憧れやぁ言うて」
「そう、ですか」
苦手。この人は苦手だ。御三家の集まりでこれまで何度か五条のお屋敷で会ったことがあるけど、上から目線で、妙に馴れ馴れしくて、獲物でも捕らえたような目で見てくる。
なんだろ? 吸血鬼みたい。今にも血を吸われそう。
「高専来たなんてびっくりやわ。てっきり悟くんに食われて、そのまま妾になって五条のお家に囲われてるもんやと思てた」
聞こえない聞こえない。聞かない聞かない。直哉さんは無視と決めている。
「ひょっとして、まだ悟くんのものになっとらんの? そやったら禪院家うち来る? なぎちゃん術式持ってるし可愛がったんで、今からやったらぎょーさん子供産めるしな」
声が聞こえてくるのも嫌で、右隣の七海の方に顔を向けると、直哉さんが話した内容が聞こえていたのか、五条さんとは、そういう関係? って顔で七海があたしを見ている。
「違う、違うから七海。思ってるようなことは何もないから」
左手の甲の上に生温かい感触……見ると直哉さんの右手が重ねられていた。
瞬間的に手を引っ込めようとしたけど、力づくで握られる。
「そんで、なぎちゃん、焼肉の後やけど――」
「オイ、てめぇは五条家に喧嘩売ってんのか?」
直哉さんの隣に悟くんが立っていた。
「あ? 喧嘩? 売ってへん、売ってへん、なぎちゃん、いい女やもん。こんな可愛いお手手、値段なんかつけられへんわ」
「っざけんな。屋敷に4人も5人も女待たせてんだろ? 早く帰ってやれば?」
「女は何人おってもえぇもんやで。悟くんかて知ってるやろ?」
「はっ、夕凪の術式しか興味ねぇくせに。それとも何か? うぶな女じゃねーと相手にされねぇとか?」
「なんやて!」
「まぁまぁ2人とも落ち着こう。1年生が怖がってしまうじゃないか」
夏油先輩が声を掛けた。絶妙のタイミングだ。