第5章 いざ高専へ
夕凪は少し拗ねてる。別に俺の前では着ていいんだからな。ただ男共のそういう視線に夕凪をさらしたくねーだけ。
服自体は嫌いじゃねーし、むしろ着ろっていうかその紐、一度ほどいてみたいし、って何言ってんだ俺は。
「それで、何?」
夕凪が真顔になって、呼び出した理由について触れて来た。別にこれといった用事はない。ただ夕凪に会いたかっただけだ。好きってそういうもんだろ。
「あぁ、高専内の結界の話とか聞いたー? 暇だしいろいろ教えてやろうと思って」
「暇、なんだ。暇つぶし、なんだ」
「まだそんな事言ってんの、会いたくなったってそう言わなきゃわかんねーの?」
使用人の一件の時も思ったが、夕凪は鈍い。俺が暇つぶしにわざわざオマエを呼び出すかよ。察しろよな。
本音を言ったら夕凪はまごついてたけどこれでいい。コイツは俺がかなり引っ張らないとひとりで勝手にいじけに入る。俺がこれまで泣かしてきたツケかもしんねーけど。
なかなか夕凪と普通の恋愛体制に入るのは難しそうだ。男と付き合った事もないんだろ。それも俺が牽制かけてたせいか。硝子が真っ白って言ってた意味が何となくわかった。
俺は夕凪の手首を掴んだ。手なんか握ったらびっくりしてひっこめそうだからな。お盆の夜、抱きあったのは奇跡に近いかもしんねー。