第5章 いざ高専へ
高専が休みの日になると、夕凪、何してんだろ? と気になったりする。俺は携帯で、夕凪を呼び出すことにした。
4月にしては暑い日だ。待ち合わせ場所に自販機のある休憩所を指定する。
炭酸飲料を買って飲んでると、夕凪が走ってくるのが見えた。その姿にガキの頃、懸命に俺に付いて走っていた夕凪を思い出す。
あの頃から健気な奴だった。今でも走り方は変わってねー。そんなに慌ててこなくてもいいのに、俺を待たせてるとか思ったんだろ? 到着するや否やはぁはぁって息を整えてる。
呼吸を整えようと肩を上下させてるのはいいんだけど、なんつー服、着てるんだ。肩見えてんじゃねーか。
それだけじゃなくいろんなとこが見え見えだ。そんな格好して乱れた息づかいと汗を見せてくるとか、俺を喜ばせるためにやってんの? それならそれでいいんだけど……。
気になって夕凪が着てる服の肩紐の結び目の端を指でつまむ。
「なぁ、この紐、ひっぱったらどうなんの?」
「え? 蝶々結びのこと? ひっぱったらほどけるに決まってる。でもひっぱらないでしょ普通」
「ほどけたら鎖骨から肩まで見えんの?」
「そうだけど、またすぐ結ぶから! それに胸元はギャザーになってるから肩紐ほどけても問題ない」
何言ってんだこいつは。見えなくても紐がほどけるなんていうだけで男は目が行くんだよ。夕凪は男ってもんを知らなさすぎるんだよな。
「オマエ、この服着るの俺の前だけにしとけよ、肩見えすぎだし」
「なんで? こんなの全然、出てるうちに入んないよ。肩ちょっとだけじゃん。涼しいんだよ」
「Tシャツにしとけ、普通のTシャツ着ろ」