第5章 いざ高専へ
「夕凪――あなたはどうしたいの?」
目を充血させたお母様の眼差しがあたしの目の奥の奥にまで突き刺さる。強い人だ。娘の決断を今、真正面から受け止めようとしている。
「あたしは、悟くんと同じ景色が見れる場所にいたい」
「坊っちゃまはあなたとは全然違う。なにもかも。呪術師としての素養も御三家としての立場も。坊っちゃまは冷静さや残酷さも持ち合わせてる。迷いなく祓う。六眼を持って生まれた時点で五条家の歴史の中でも稀有な術師よ。そんな人の側にいれる? 同じような景色に立ち向かえる?」
「悟くんのそういう所が怖くないって言ったら嘘になる。でも、悟くんの側にいるってそう返事したの。そしたら、彼は嬉しそうで、ほら来いよってあたしの手をひいて……それに、もし離れて別の道に行っても、あたしはきっとずっと悟くんが無事かどうか心配で、心はいつも悟くんを思ってしまう」
「夕凪、忘れてない? 婚約するのよ、坊っちゃまは、20歳に」
「……わかってる。わかってるのお母様。それでも……それでもあたしは、悟くんのことが……好きなの」
涙が止まらないあたしを、お母様が全力で抱きしめた。お母様の肩を借りてあたしは声を殺して泣く。
五条家に迷惑をかけるような事だけはしないとお母様に告げる。
けど、お母様はあたしの話をひとしきり聞くと、微笑んで、逆に晴れやかなお顔になっていた。