第5章 いざ高専へ
あたしは寝そべっていた体を起こし、背筋を伸ばす。
「そう、だからあたし、カラダはしっかりしてるよ。悟くんと同じ土台だよ。だから呪術師になってもそう簡単にへこたれない」
「……ねえ、どうしても呪術師になりたいの?」
「うん」
「夕凪……お願いだからお母様をひとりにしないで。あなたを失ったら生きていけない」
「失うって大げさだよ、ちゃんと連絡するよ」
「そんなのなんのあてにもならないのが呪術師なのよ。突然、突然死ぬのよ、呪術師は」
「え、」
「あなたのお父様もそう言って何でもないように昼前にうちを出て行って。急に呪胎が発生したからって、さっと祓ってくると言って出て行ったわ、でも……」
「その呪胎は著しく成長を遂げて特級呪霊に変態したの。そしてお父様は帰らぬ人となった。遺体さえも残らなかった。そこにあったのは、目隠しの黒い布とお父様のぼろぼろになった着衣だけ」
初めて聞いた話だった。
小さい頃、お父様の話をお母様はほとんどしなかった。どうして死んでしまったの? と聞いても、お仕事で命を落としてしまったのっていうだけで。呪術師は命懸けの仕事なんだっていうことだけはわかってはいたけど。