第3章 豹を育てた烏
「もうこんな時間だな。烏野に行く時間だ。悪いな、今日はここまでだ」
『うん!今日もありがとう一繋さん。毎日バレー教えてて大変だね』
一繋は日中は近くの子供達に、夕方からは烏野高校へとバレーボールを休む暇もなく教えに行く。
毎日のようにそんな多忙な生活を送る一繋を心配しては声をかける。
「なぁに。バレーボールを教えるのは、実際にプレーするのとおんなじくらいいいもんだよ」
ニカッと、まるでこんなに楽しいことはないというかのように一繋は笑った。
『ふうん。私は絶対に自分でプレーする方が楽しいと思うな。』
「まあお前はまだそれでいい。
ただな、まだ未熟な雛鳥たちを俺が羽ばたかせてやるんだよ。
あいつらが大きく飛び立った瞬間を経験するとな、ああなんて楽しいんだって思えるんだよ」
ちょうど空に飛び立った烏の集団を見上げながら、一繋は語った。
「...それにな、烏野には小さな巨人がいるんだ。
身長が有利になるスポーツで、背が小さいハンデをまるでないかのようにプレーする。他にもな...」
と自分の教えている高校の選手の特徴を楽しそうに話し始めた。
そんなにもいいものなのか。教える、飛び立たせる手助けをするというのは。
いつかやってみてもいいかもな。
ただ、人に教えるなんて難しすぎて今の私には無理だ。とは思った。