第8章 始まりの始まり
何も言えなくなる烏野を背には口を開いた。
『及川さんて、あまり見る目ないんですね。
本領を発揮できない?そんなことありません。彼らは私の言ったことを必死に実践しようとしてくれる、どんな時もです。
そんな彼らだからもっと教えたいと思った。まだ未熟な彼らだからこそ、成長させたいと思った。
及川さん、私は烏野を絶対に全国へ飛び立たせますので。』
にこりと笑って手を差し出す。
「ははっ、頼もしいねえちゃん。
でもまだ諦めないからね。それと、
次は最初から全力でやろうね」
及川は差し出されたの手を握った。
かと思うと自分の方に引っ張り、釣られてついてきたの体を抱きしめた。
「楽しみにしててね」
と及川はの耳元で囁く。
「!!」
「な!を離してください!!」
「おい、いい加減に...」
澤村までもが声を上げようとした瞬間パッと及川が顔を赤くして離れた。
「じゃ、じゃあね。ちゃん」
の頭をぽんと撫でた及川は耳まで顔を赤くしたまま帰った。
なんだよあれは反則すぎだろ、と思いながら。
『...はい、楽しませてくださいね』
及川はに耳元で仕返しのように囁かれたことを思い出していた。