第11章 Prey (観察対象は監督生さん)
「じゃじゃーんっ!
小エビちゃんの登場でぇす」
「ちょっ、フロイド先輩!
どこに連れて行くんですかっ?!
引っ張らないでっ…ってキャー!」
今の現実を受け入れたくないユウは
思わず自分の顔を両手で覆った。
◆
放課後になり、渋々ジェイドのクラスに行こうとすると、今度はフロイドが「小エビちゃ~ん♡迎えにきたよぉ」と甘い声と共に現れて、米俵のように担がれ、あっという間に攫われた。
「子分~~~!」と叫ぶグリムの悲しい声が廊下に響いたが、悪のウツボ兄弟から助け出してくれる王子様なんているはずもなく…。
「これ、今すぐ着てねぇ」と言われるまま渡された服に、とりあえず着替える。鏡を見ると、スカートがロング丈のクラシカルメイド服を着た自分が居た。
異世界にもこんな服ってあるんだぁ…。
(なんだか、コスプレみたい……)
長い物には巻かれろタイプでないと、オンボロ寮の監督生なんてできやしない。諦めが早いユウは、すでにフロイドのわがままに順応していた。
しかし、その服を着ている姿を
審査員のように待ち構える
アズールとジェイドに見られるまでは…。
◆
「な、なななんでいるんですか!
ジェイド先輩、アズール先輩っ!」
これだからオクタヴィネルはッ!
あまりの恥ずかしさに彼女にしては珍しく
理不尽にキレ散らかした。
見世物になるなんて聞いてない!
うわーんと内心涙を流す乙女心なんて
知ったこっちゃないと悪徳三人衆は
ユウの制服に関して熱く議論していた。
「やはり僕の見立てに間違いはないッ!
ユウさんには、今までのモストロ・ラウンジのイメージをそのままに、女性としての上品さをプラスして演出させてもらいました。
どうです!
これぞ新しい紳士淑女の社交場の姿です」
「ふむ。
裾のフリルがまるで
観賞魚の尾ビレようですね。
ですが、彼女には
少し古風すぎるのでは?」
「うげぇ。
アズールってあんな服が好きなの?
ヒレが多すぎてカーテンみたい」
「べ、別にこれは
僕の趣味で着せてるんじゃない!
ユウさんがモストロ・ラウンジで
どーしても働きたいと言うので
仕方なく、客寄せパンダ……ゴホン。
売上貢献の為、
女性服を準備して差し上げたまでです」