第9章 lure(咬魚の誘惑)
(え……っ)
「必要であれば、この世界の知識から
学園での勉強のサポート、
護身術の指南も加えることができますが…
いかがですか?」
(観察されるのは嫌だけど、
そんな物騒な指南は受けたい!)
「……痛いこととか、酷いことはしませんか?」
「失礼ですね。
僕が女性に手を上げる雄だとでも?」
「ユウさんには、そう見えてたんですね。悲しいです。しくしく」とジェイドはいつもの泣き真似をした。ここにエースがいれば、ツッコミの一つでもしただろうが生憎彼はここにいない。
ジェイド・リーチと言えば、言わずもがな問題児ばかりのNRCの中でも腕っぷしが強い。彼が守ってくれるのであれば、今日みたいな輩に絡まれることも減るだろう。
また、スーパー秘書と名高い彼のことである。
ユウがまだ知らないこの世界の知識や、勉強のサポートは安心して受けられそうだ。
彼は私に特別な力があると言っているが、
観察した結果、それがなくても問題ないと言っている。
そう考えると、これは悪い提案ではないんじゃないか…?とユウも思い始めてきた。
オクタヴィネルと契約するのは怖いが、第一に今目の前の彼から逃げられる気が一滴たりともしない。
はあーと深呼吸をして、ユウも覚悟を決めた。
「分かりました。
ジェイド先輩と契約します。
でも…守ってもらうだけは嫌なので、
私に生きる術を教えてください。
それが条件です」
ジェイドはその返答が予想外だったのか、
なお面白そうに笑みを強くした。
「ええ、もちろん。
ユウさん、
たっぷりとしごいて差し上げますので、
覚悟して下さいね」
くすくすと笑う先輩を見て、
ユウは少し後悔した。
あの時、気分屋のフロイドを選んでおくべきだったと…。