第7章 Magical flower(魔法の花)
「ステップアップだ、子犬。
より魔法薬学の知識を増やす為、
この花の観察と育成をして、
ぜひリーチ兄を見返してやれ。
先ほども言ったが、この花に人の傷を癒す力はない。一見すればそこいらに咲く花となんら変わらん……が、唯一養分として女性の歌声が必要なんだ。
一日一回でいいので、
この花に歌を聞かせてほしい」
「え、えええっーー!!無理ですよ!
だって、あれだけ貴重な花だって
先生も言ってたのに。
それに私、魔法…使えないですし…」
しゅんっ…と
落ち込んで垂れる耳がユウから見える。
「魔力のあるなしは、この花には関係ない。
それに…花を咲かせる必要はないから安心しろ。
だが、そうだな……。
学園長に俺からのアルバイトという形で依頼しよう。
毎日の育成と週一回のレポートで報酬を渡そう」
報酬!!
現金なのは分かっているが、その一言がとても魅力的なのは否めない。どれだけユウが料理上手で節約しているとはいえ、住んでいる所はオンボロ。修繕してほしい所や、年頃の女の子のように欲しいものだってあるのだ。
「子犬がいうようにこの花は、とても希少だが
それ故にレポートや記述書も少ない。
もし子犬がこの先何かあっても、
魔法の花のレポートを書いたとあれば箔が付くだろう。
魔法薬学を極める為にも
今後、優れた観察力と深い考察が必要になる。
どうだ…やってみないか?」
無一文で無知な私を、可愛がってくれる学園長やクルーウェル先生が大好きだ。だから、その先生達の期待に答えたい。
それに知らなかった世界を
知ることは楽しいし、大好きだ。
「わかりました。やります!」
ガッツポーズをする子犬に、
無事雑用を押し付けた先生は少し罪悪感を感じた。
◆
後日「今日の夕食はグレートな店に連れて行ってやる。迎えに行くから、レディとして毛並みを整えておくように」とクルーウェル先生のおごりで学外で初めて美味しい食事を頂きました。
「クルーウェル先生ばっかり甘やかして!
たまには私だってご馳走しますよ!」と
次の日には学園長が珍しく張り合ってのは、
ちょっとだけ…面白かった。