第5章 No(契約なんて致しません!)
こうやって大人数でご飯を食べた経験がないから、余計に嬉しくて…つい自分が食べるのを忘れてしまいがちだ。
チマチマと動き回るユウの見かねて、グリムがぺしぺしとしっぽを叩きつけた。
「子分のご飯が美味しいのなんて、
当たり前なんだゾ!
ほら、お前も座ってちゃんと食え!」
とまさかのグリムに注意される。
…最近のグリムは、ユウに胃袋を掴まれたのか
当初の暴れん坊がなりを潜め、最近ではどちらが監督しているのかたまに分からない程、大人っぽくなった。
その光景に1年マブは何故か「あのグリムが、いつの間にか成長して…」と内心驚いたが、口に出さない様に白米を煽った。
「はあい」と返事をして、ユウも箸をとった。
◆
あれから「おかわりコール」も収まり、全員で
エペル家産の林檎を使ったデザートを食べていた。
オーブンで香ばしく焼いた林檎に、バニラアイスとシナモンパウダーがかけられており、甘くて美味しい出来栄えだ。
「……僕、
オンボロ寮の寮生になりで(なりたい)」
「右に同じく」
「……てか、結婚したい」
「ぶっ飛ばすぞ」
「……………帰りたくない」
その頃には、全員が胃袋を掴まれていた。
毎日ユウの手料理を食べている狸に、
殺気を感じるくらいには…。
デザートを全員に配り終えたら、自分の分はさておき皆の皿をかたずけて、食器洗いをしているユウ。
めちゃくちゃ働き者である。
気もきくし……可愛いし………。
あんな彼女ほしいなぁ……。
こうしてユウが知らぬ間に
男子高校生たちを癒し、
陥落させて行くのであった。
◆
食後のんびりして時刻も20時を回った。
珍しく「帰りたくないッー!!」と大声で暴れるセベクに、どうしたものかと困っていると…
扉をドンドンと叩く音が聞こえた。
「はあい。どちら様ですかー?」
「こんばんわ。夜分にごめんなさい。
ユウさん、グリムさん」
そこには珍しいお客様ーオルト・シュラウドがいた。