第17章 Broken(抜け駆けナシ・恋愛協定は破られた)上
「子分どこ行ってたんだゾ!…お前は目ェ離すとスグどっかに行く癖直せ!オレ様がいつもどれだけ心配したと思ってるんだー!
子分は魔法が使えなくて弱々なんだから、頼りになる親分の後ろに隠れてればいいんだゾ。そこら辺の奴なんか、オレ様の魔法でコテンパにしてやる。ヘン…オレ様は最強だからな!
だから、オレ様の傍を離れるんじゃねー!」
「ふふっ…ありがとう、グリム、一人してごめんね」
「フンッ!!分かればいんだゾ。
ホラ早く席について、オレ様を抱っこしろ!」
「ハイハイ」
両手(前足?)を伸ばして抱っこしろ!と主張するグリムを抱える。びよーんとどこまでも柔軟に伸びる体は猫と一緒だ。
それにしても頼れるカッコいい親分に成長したものだ。
今日は特別にワンランク上のツナ缶をプレゼントしてあげよう。
そんな風に内心子供の成長を喜ぶユウが、先程のレオナの助言を思い出してハッと気づく。
「レオナ先輩…!
私にはグリムがいるので、
しばらくは守ってくれる男はいらないみたいです」
「それでは!」と今度こそ元気にスカートを翻して、ユウは去って行った。黒髪がふわっと揺れると、清潔感ある女子の香りが鼻をくすぐる。普段誰よりも頭が回る彼にしては珍しく挙動が遅れた。女の甘い匂いに牙が疼くレオナだったが、先程のユウの言葉を脳内で思い出して、
「ア゛゛…??!
まさか……毛玉に負けた……?」
あとで丸焼きにして食っちまおう。
レオナ、そして
取り巻きに見ていた1ーA男子の心は、
見事にシンクロした。