第17章 Broken(抜け駆けナシ・恋愛協定は破られた)上
『次のニュースです。ツイステッドワンダーランドに夜空に輝く星がまた消えました。古来より星の消滅は救世主の復活を意味する所ではありますが、魔法省の考古学者たちはこれを否定しています。今日までのべ数百という天体が消滅している事件は世界の異変とも言うべき事態ではないでしょうか。嬉しいニュースでは、100年ぶりに惑星直列の刻が迫ってきており……』
滑舌に話していたニュースキャスターの声が突如砂嵐のような機械音が混じる。
「ああ!?また壊れたのか!このポンコツ」
ゴースト達が集まって振ったり、叩いたりしたが、ついにはウミョミョミョンとまるで宇宙人と交渉しているかのような音が鳴りだした。これにはガッカリして死んだような(もう死んでいる)ゴースト達の表情に、ユウがふと疑問を呟く。
「……テレビあるのに、ラジオで聞くんだ」
「…?ああ。お嬢ちゃんは知らなくてもおかしくない。
昔はテレビで流せない話題って言うのは、もっぱらラジオから情報を得ていたんだよ。利権も権力もなく発言力が弱い人間(ヒューマン)でもリークできるよう聖戦時代に革命軍が行った手段の一つさ」
「もっともーっと古い時代は動物言語で国家機密を運んでたのさ。生憎妖精族や人魚族なんかの一部の種族にしか発声できない音があるからね」
「今じゃワンダーランドの大多数が人間(ヒューマン)だから、ラジオからは有効な情報を聞き出せるってわけさ」
「ふーん。すごい歴史があるんだね」
「そうさ。だが、壊れやすいのが玉に傷だね。
この”WHISP(こそこそ話)”の局番は今の時代じゃ出回ってないから壊れたら一巻の終わりだよぉ~」
相変わらず死にそうな(もう死んでる)顔をしたゴースト達を不憫に思い、「デュースに声、かけとくね…」とせめてもの慰めをかけた。(物が壊れたらデュースを召喚)グリムは目をしゅぱしゅぱさせて、くわ~と大きな口を開けた。
その時、玄関のチャイムが鳴る。
いつもよりどんよりと空中を漂う彼等に頼むのは申し訳なく、護身用のグリムを無理やり抱っこしてユウは玄関に向かう。(は~な~せ~!)
こんな時間に誰だろう…?