第17章 Broken(抜け駆けナシ・恋愛協定は破られた)上
「ちなみに…オクタヴィネル寮長である僕から補足させて頂きますと、全生徒対象アンケートでは『ユウさんが自分以外の男と付き合ったらどうするか?』に対しては約98%が『絶対に許さない』『相手誰?夜道歩けると思うなよ』『学校休む』『僕に死ねってことすか?』と学業・私生活に異常をきたすと答えています」
「キタコレ…解釈の完全一致」
「おお~!すげぇ~!ユウはモテモテだなっ」
ユウ本人が聞いたら飛び上がって叫びそうなアンケートだったが、幸いここに彼女はいない。
「ちなみに、牽制し合ってた協定が崩壊した今。
先輩方はどうされるおつもりですか?」
ジャミルが困り顔でハーツラビュル寮から順にぐるっと各寮長の顔を見ていく。自身もオーバーブロットを経験し、ユウに助けれられた一人。
自らの野心の為、ホリデーに彼女を利用した過去があるがユウは笑って許してくれた。しかも、認められなかったジャミル自身の能力も一番最初に評価してくれたのも彼女だ。そんな経緯も含めて、ジャミルの中ではユウが「女性だから」ではなく「ユウだから」大切にしようと誓っている。きっと経緯は違うが、全員が彼女を特別に想う気持ちは同じなんだろう。
可愛い後輩が、性悪男に泣かされる姿なんか死んでも見たくない OR 好きな彼女を別の男に捕られたくない。
親愛と恋情。
どちらかか、あるいは両方か。自覚か無自覚か。
少なくともどれかに該当する者しかこの場にはいなかった。
故にNRCの中でも力があるこのメンバーだけは、どういう行動をするかしっかりと観察せねばならないのだ。
「交際を申し込む」(紳士か!)
「番にする」 (野生か?!)
「求愛する~」 (人魚か?!)
「息子の嫁に推す」(どこ目線?!)
「ほらな」
だから、大変なんだ。
ぽんっとカリムの肩を叩いたジャミルは、いつになく疲れた顔つきだった。
問題児の監督生 ユウ。またの名を初恋泥棒。
うっかり恋に落ちた日には、各寮ごとの戦争が避けられない。だから、協定を結んだんだろ。マ、それも今日までだけどな。