第14章 Crimson apple(真っ赤な林檎はいかが?)
ジェイドへの接し方がなぜか気まずいユウだったが、すぐそんな日も噓のように忙しくなる。
VDC(ボーカル &ダンスチャンピオンシップ)が始まったからだ。しかも合宿先に住まいのオンボロ寮を提供している為、毎日マネージャーとして仕事に目を回していた。
最初は簡単な雑用だけだし…と甘く見ていたが、不慣れながらがむしゃらに頑張るデュースやエペルを見て自分に出来ることは全力でやろう!と彼らを支えることに徹した。
アズールになんとか無理を言ってその間アルバイトも休み、カロリーや栄養バランスを考慮した料理を作り、深夜までVDCメンバーの練習に付き合った。
”契約”と称した観察もその間はお休みだったらしく、しばらくジェイドの姿も見ない日の方が多かった。
(真相はマブやヴィル達が結託して、オンボロ寮からジェイドを締め出していたせい)
本番が近づくにつれ、グリムと一緒に
マネージャー業も板についてきた頃
VDC当日にヴィルがオーバーブロットした。
それまで他寮の寮長にも関わらず、何かと世話を焼いて面倒を見てくれたヴィルのことが大好きだった為、ユウ自身も動揺を隠せない。
だが、泣き言を言ってる余裕などないのだ。
魔法が使えなくても使えないなりに
戦ったり叫んだり走ったり、
皆ヴィルの命を助けようと奔走し…
無事助かったと安心していざ本番。
結果としては、わずか一票差で優勝することは叶わなかった。
だれよりも傍で彼らの努力を見てきたユウだったが、心のどこかではホッと一息をつく。
あれだけ美にこだわって、
外見・内面共に鍛えている彼が
醜いと自身を責める姿で優勝するよりも、
自他ともに認めた世界で一番美しい姿で
勝利を勝ち取ってほしいと思ったのだ。
その後RSAのネージュ達が優勝し、
大円団でハイホーのデュエットをした際に
舞台裏からひっぱり出された時には
心臓が止まるかと思ったケド……。
◆
そんなこんなで、
賑やかだったオンボロ寮も
以前の静かさを取り戻していた。
正直とっても寂しい……。
明日にはまたモストロのバイトも再開するし、雑用という忙しい毎日が待っているとは思うが…孤独を感じる心に嘘はつけない。