第4章 True friend(マブダチといつもの日常)
シトシトなんて可愛いもんじゃなく、それはザーザーとまるで嵐のように体を叩きつけるような雨粒だった。
ずぶ濡れになって水を吸った運動着が重い。寒い。
ぬかるんだ地面に
ランニングシューズが絡め取られ、
普段より余計に体力を消耗する。
ーもう、無理だ。
そう、直感にも似たような感覚が
考えるよりも先に頭に浮かぶ。
「あきらめるなッーーー!!!」
叩きつけるような暴雨の中で
少女の声はなぜか、まっすぐに僕の胸を刺した。
◆
ー学園 外廊下
「デュースが表彰されるなんて、すごいね!」
「そう言われると、照れくさいな。
…ありがとう、ユウ」
いつものように、ユウとグリム、エース、デュースの1Aメンバーで次の授業への教室へと向かっていた。
その中でも話題となったのは、全国高校生陸上競技大会で1年生のデュースとジャックが入賞したことだった。
自分以外のやつ(特にデュース)が、ユウに褒められていることに面白くなさそうなエースはわざと携帯をいじる。
その下で「オレ様より目立つなんて生意気なんだゾ!」と、拗ねながら文句言うグリム。
そんな二人の態度は気に入らないが、それ以上に自分の力で入賞できた事実がデュースにとって今一番嬉しいことだった。
隣で自分のことのように、嬉しそうに喜んでくれるユウの顔を見ると、余計に胸がいっぱいになる。
野郎ばっかりの学園で、純粋で可憐な彼女の存在は(掃き溜めに咲いた一凛の花のようだ…)とデュースは思っている。
以前エースに同じことを言ったら
「なにその表現、ダサ」と笑われたのを思い出した。
母にも今回の入賞の件を伝えたら、
彼女と同じように喜んでくれるだろうか。
苦労をかけた母と、隣で微笑むユウが一緒に自分を祝ってくれるシーンをイメージしたら、途端にデュースの頭の中で「ゴーンゴーン」という教会の鐘の音と、鳥や花達が祝福の歌を歌い始めた。
ーードンッ
そんな幸せをぶち壊すように、突如肩に痛みが走る。
ぶつかった衝撃で相手を見ると、そこには同じく陸上部の先輩が肩をさすってこちらを見てきた。