第13章 Changing distance(変わる距離)
「……キミが言いたくなければ無理強いはしないケド。
以前はジェイドとよく一緒にいる姿が見かけたが、
最近はそうでもないね」
「ギクッ」
めちゃくちゃ分かりやすく肩が揺れた。
それを見てリドル先輩が大袈裟にため息をつく。
「ジェイドがなぜキミに興味を持っているか知らないけど、
奴に困らされてることはないかい?
いじめられたり、
ひどい目にあったりはしてない?」
「リドル先輩…!」
(私のこと心配して、様子を見に来てくれたんだ…)
自己中心的な生徒しかいないこの学園で、ユウに親身になってくれるリドルに感動した。古臭い言い方だけど本当に胸がジーンとした。
「心配してくれてありがとうございます、リドル先輩。
ジェイド先輩も
そこまで悪い人じゃない…と思いますし」
「ジェイドがいい人?
失礼だけど…キミ、頭を打ったのかい?」
「……。
たしかに
以前の私からは考えられないセリフだわ」
なんて失礼な会話だろうか。
口には出さずに心の中でそう思ったグリムが
この中では一番マトモな大人だった。
「何かあれば、すぐ僕にお言いよ。
他寮生だろうと、首を跳ねてやる」
(目が笑ってない…)
「ありがとうございます。
リドル先輩はたしか同じクラスでしたよね。
ジェイド先輩は信用できない…ですか?」
「そうだね。何を考えているか分からない…いつも体(てい)よくかわされる。
本音を見せない人間を、僕は信用できない。
ユウも油断しないように。
奴ら(オクタヴィネル)には気を付けるんだよ」
「…そうですね。
ご忠告ありがとうございます」
「…………。そうだ、
魔法史で満点を取ったそうじゃないか!
エースとデュースにも
ユウを見習ってほしいものだよ。
あのグリムの世話までしているのに、
キミは偉いね」
「えへへっ」
「どういう意味なんだゾッ?!」
重い空気を切り替えるように、よしよしと頭を撫でられる。
猫の毛並みを整えるような繊細な手つきがくすぐったくて、思わず笑みが溢れた。単純だが褒められることにはめっぽう弱いんだ。
それでも頭の片隅では、
ジェイドの事をもっと知りたいー
そんな好奇心が湧き上がっていた。