第13章 Changing distance(変わる距離)
意識が覚醒して思ったことは、
『ここに片割れがいなくてよかった』ということだけ。
──今の僕は、
とても
他人に見せられるような顔をしていないでしょうから。
◆
ー最近、ジェイドがおかしい。
例の人魚にしかかからない奇病が治まってからというもの、ジェイドの様子が何かおかしい。生まれた瞬間から一緒にいる双子にしか感じないシンパシーなのか、だがジェイド自身も自覚している節がある。
いつも隣に過ごしているからこそ、言いたことは言わなくても分かるし、片方が楽しければ片方はさらに楽しくなってくる。”そういうもの”として、自身の半身・家族・片割れ…、呼び名は様々だがフロイドにとってジェイドは自分の命と同等の存在だ。
だからこそ感じる違和感。
見た目は変わらずとも、ジェイドの中の何かが変わった。
アズールから新たな企みを聞いた時、
山登りを始めた時、
キノコの存在を知った時。
陸の世界を知る内に、お互い変わる所はもちろんある。いちいち気にも止めてなかった。が、生まれて初めてのジェイドの反応にフロイド自身も困惑する。
今日も今日とて、ボケっーと情けなく口を開ける姿に皆、「フロイド!って、ジェイド…っ?!すまん、間違った!」と周りの生徒が声をあげる姿を目撃した。
(……???)
いつものジェイドらしくね~。
小エビちゃんとなんかあった?
その割には、小エビの方はいつもどおりだ。
”人喰いサメの住処である沈没船に金貨一つ探してこい”と同等レベル(具合悪いジェイドの相手)をお願いしたというのに…。
自分に助けを求めてこない小エビちゃんにつまらなさと感じつつ、フロイドはミントの飴をガリッとまたひとつ嚙み砕いた。
◆
今日も食欲が一切沸かない。
物事に集中しようと思っても、別の考えが思考を遮る。
彼女を見ると胸がキリキリと痛い。
会うたびに
オンボロ寮のユウがキラキラと輝いて見え
周りに群がるオス達を蹴散らしたくなる。
ーこんなことは初めてだ。
最近初めての経験が増えた気がする。
そうこう考えている内にまた気づかず目の前のアズールにぶつかって、ついには彼の眼鏡が割れた。