第3章 先輩【※冨岡義勇】
義勇は絶望を感じて、思わず聞き返してしまった。そんな残念そうな顔を浮かべる義勇を、陽華は上目遣いのまま見つめると、小さな声で言った。
「……はい。でも…ちゃんと先輩が我慢して…、それで…サボらないで練習に出て、……全国大会で…優勝出来たら、そのときは……ご褒美にあげます。」
「……え?」
「……私の…初めてを…です。」
そう言って、顔を真っ赤にさせる陽華に、義勇の顔も段々と赤くなる。
「そうか。それは…、頑張らないと…駄目だな。」
「はい、だから頑張ってください!」
そう言って陽華は、ニコッと微笑んだ。
・・・・
「本番がご褒美だと言うが、その前の…少しくらいなら、触るのは有りか?……なんか他にもご褒美的な物があると、さらに頑張れる気がする。」
「調子に乗らないでくださいっ!!」
陽華が怒ると、義勇は残念そうに顔をしょぼんとさせた。しかし、チラッと陽華を見ると、最後のお願いとばかりに、小さい声で尋ねた。
「……じゃあ、帰り道に手を繋ぐのは、いいか?」
「ふふ、それはいいですよ。」
陽華のその言葉を聞いて、義勇は嬉しそうに微笑んだ。
ー 先輩 完