第3章 先輩【※冨岡義勇】
焦って黙り込む陽華に、義勇は穏やかな表情を向けた。
「やっぱり、こういう事は順序が大切だと思う。…いいか?」
そう問いかけると、義勇の顔が陽華の顔に近づいてきた。
(あ…、キ、キス?)
陽華が慌てて、目を瞑り、唇を突き出した。そこに、義勇の唇が重なる。
(先輩の唇、柔らかい…。リップしてくればよかった。私、カサカサじゃなかったかな?)
そんなことを気にしてるうちに、初めてのキスは終わった。
「お前の唇、柔らかいな。」
そう言うと、義勇の指先が陽華の唇を、ぷにぷにと押した。
「せ、先輩のも、柔らかいです!」
自分でも何を言ってるのか、わからなくなった。慌てる陽華に、義勇は優しい顔を向ける。
「そうか?……もう一度、確かめてもいいか?」
義勇の顔が近づく。もう一度、暖かく柔らかい感触が唇を覆う。しかし今度は、くっつくだけじゃなく、優しく啄むように、何度も唇を吸われる。
(やだっ…、頭の中がパンクしそう!?)
やがて、満足したように義勇の唇が離れる。
「キスって、こんなに気持ちがいいんだな?」
恥ずかしそうに陽華を顔を見ると、陽華は緊張で口をパクパクとさせていて、思わず義勇は笑った。
「お前な。キスくらいで、そんなに緊張するな。本題はこれからだぞ?」
そう言われて、やっと思い出す。
「あ、でも!もう、冨岡先輩の色々な顔は見れたんで、今日は大丈夫です!」
これ以上はやばい。心臓が持たない。そう言って逃げようとする陽華の腰を、義勇はぐっと抑えた。