第3章 先輩【※冨岡義勇】
「じゃ、触るぞ?」
義勇はこれ以上は変な気が起きないよう、陽華の顔を見ないよう、少し後ろに下がった。そのまま後ろから手を伸ばし、陽華の胸に手を触れた。
「あっ…、ま、待ってください!」
「どうした?」
これからという所に、陽華のストップが掛かり、義勇は怪訝な顔を浮かべた。
「だって、後ろからじゃ、先輩の顔がどうなってるのか、わかりません!」
人の気も知らないで、勝手な事言う。義勇はもうどうとでもなれと言う気持ちになり、ため息をついた。
「じゃ、これならいいか?」
そう言うと、義勇は陽華の腰に手を回し、膝の裏に手を差し込んで、陽華の身体を抱き上げた。
「え?せ、先輩!?」
驚いて、足をバタつかせる陽華の身体を、胡座をかいた自分の足の上に、横乗りに乗せた。
「これなら、見えるだろ?」
「いや!…み、見えるけど、近いです!!」
陽華が恥ずかしそうに両手で顔覆った。
義勇はさらにため息をつくと、顔を覆っている陽華の手を取り、自分の胸に当てた。
「わかるか?…俺も緊張してるし、恥ずかしい。…顔はそんなふうに見えないかもしれないが。」
少しだけ顔を高揚させた義勇が、真っ直ぐに陽華の顔を見詰めた。学校中の女子が騒ぐほどのイケメン。それが今、間近にいて、自分を見つめている。それだけで、心臓が壊れそうなくらい高鳴る。