第8章 指南【※竈門炭治郎】
そんな不安を抱える善逸の横で、性のスペシャリスト・宇髄天元の神講座が始まった。
「炭治郎、最初に聞いとく。お前、口吸いはどの程度する?」
ズバリと聞いてくる天元に、炭治郎の顔が赤くなる。
「え!?……いや…、それは…その、人並み程度には…、」
炭治郎の答えに、天元が眉間に皺を寄せた。
「ぬるい、ぬるいねぇ…。このようなザマで、地味にぐたぐだしてるから、お前は負けたんだよ。」
天元は吐き捨てるように言うと、人差し指を炭治郎に突き付けた。
「いいか、炭治郎。これだけは覚えておけ、唇、及び口内は、人間が持つ、最大の性感帯だ。」
「人間…、最大の………、」
「そうだ。そして口吸い、これを制すれば、その後のまぐあいは、ぐっと変わってくる。」
天元の言葉に、炭治郎の喉がゴクリと音を立てた。
「いいか?まずは口づけで、女をその気にさせろっ!女はな、雰囲気と感情に、流されやすい生き物なんだ。」
「雰囲気と感情………、」
「はい、そこメモっとけ。」
「あ、はいっ!」
炭治郎は懐から、メモ帳と筆を取り出すと、急いでメモる。
「どこまでも甘く、濃厚な口づけで、その女の本能を暴き出せっ!性への衝動を、引き出してやるんだ!」
何を言ってるか、まったくもって理解は出来ないが、その勢いに、炭治郎は思わず大きく頷いた。
「…でも、宇髄さん。上手く引き出せたとしても、それをどうやって、見抜くんですか?」
天元はいい質問だ、と言わんばかりにうんうんと頷いた。
「そりゃ、女の反応を見てりゃわかる。……我慢が出来なくなった女は、自分から身体を擦り寄せてくる。」
本当ですか?…と、訝しげに眉を潜める炭治郎とは対象的に、天元は自信満々に言葉を続けた。
「そして、女の方から、求めるような言葉を吐かせられたら……、炭治郎、お前の勝ちだ。」
炭治郎は「はぁ。」と唸った。
そうなったら、万々歳だけど……、自分にそんな技量があるとは思えない。炭治郎はトホホと自信なさげに俯くと、小さく呟いた。
「それを口吸いだけで?……出来るかな、俺に……、」
「だから、今から特訓すんだよっ!」