第8章 指南【※竈門炭治郎】
風柱邸にて
突然訪ねてきた炭治郎と善逸に、縁側でおはぎを食べていた風柱・不死川実弥は、明らかに不快な顔で二人を睨んだ。
『ほらほら〜!だからここは辞めようって、言ったじゃないっ!』
そう言って、炭治郎の後ろで震える善逸が耳打ちする。
「しかし、ここで逃げていたら、俺は、真の意味で男に成れない。」
そう言って、真正面から実弥を見据えた炭治郎に免じて、居間に通してもらえた。
「んで、ここに来た理由はなんだァ?」
「はい、実はご相談したいことがありまして……。」
炭治郎がことの経緯を話す。
「盛大に、フザケてやがんなァ……、」
「いいえ!大真面目です!!」
曇りなき眼で、そう言い返した炭治郎に、実弥は呆れたように、ため息を吐いた。
「んなこと考えてねぇで、稽古しろといいてェーが、俺も男だ。気持ちはわからんでもねェ。……それで、俺に何を聞きに来たァ?」
「その…、女性の扱い方ですかね?どうすれば、そういうときに、女性に満足してもらえるのかを…、」
「ンなもん、簡単だァ。縛れ。」
「はい?」
完全に頭にハテナが浮かんだ炭治郎と、本日3度目の目玉を飛び出させた善逸に、実弥は平然と言葉を続けた。
「最初は戸惑う女が多いが、最後は狂ったように善がる。…俺の経験上、間違いはねェ。」
そう言うと実弥は、顎に手をやって、ニヤリと微笑んだ。
「後は…そうだなァ。目隠しなんかしてやりゃ、完璧だァ。」
「あの…、もうちょっと、初心者向け…というか、初々しい…きゅんとする感じのがいいんですけど。」
そう言った炭治郎に、実弥は顔をしかめ、明らかに難色を示した。
「ならそりゃ、俺の専門外だァ。煉獄にでも、相談しろ。あいつは女にも優しいからな。」
「はい、そうします。有難うございました!」
炭治郎は礼を言うと、善逸とともに、風柱邸を後にした。