【ヒロアカ】手のひらのぬくもり※トリップ【相澤/轟/爆豪】
第2章 #2 住・生・楽
「…ことのすべては、こうだ。」
けだるそうに頭をかいて話す男。
「いや、まぁ…うん。」
彼、相澤のいうことはよくわかる。
私が素性不明な理由も、ここの世界の人間ではないから。
(というか目覚めてないだけなんだよな…)
「で?お前は誰なんだ?」
話すだけ話したんだから、と言わんばかりの目で相澤は私をみる。
しばらくして右腕の感覚が戻ってきた私は、ぐっと力をこめて、上半身を起こそうとする。
それに気づいた相澤は、先ほどよりも私に近づき、背中を起こしてくれた。
優しいんだな。
「ありがとうございます。」
「いや。」
そういうと、相澤はまた私をみて黙った。
上半身を起こしたことで、彼をまっすぐ見ることができる。
テレビでみていたその風貌そのものが、今目の前にある。
思わず答えるのも忘れて、私も彼をまた、見ていた。
数秒間、沈黙が流れた。
口火を切ったのは、相澤だった。
「おい。」
「あっ、え…はい。ごめんなさい。」
思わず謝ってしまった。
すると相澤は眉間に力を入れ、ため息ついた。
「だから、お前の、自己紹介をしろといってるんだ。」
私は、求められた質問に対し、そうだった、と思いだしたかのように答え始めた。
(夢だしな…嘘つく理由もないし。話してれば起きるかな。)
そんなことを思いながら、生年月日、学歴、職歴を述べていると、相澤が口をはさんだ。
「大学をでてから社会人になって、そこからは地元企業に…」
「ちょっと待て。」
突然遮られた自己紹介に、思わず瞬きして言葉が詰まった。
相澤はまた、眉間にしわを寄せて私を見る。
(なんかおかしなこと言ったのかな…?)
「お前、どうみても生徒と変わらん子供だろ。くだらん作り話を聞くほど俺は暇じゃない。」
「え?」
”生徒と変わらない”
どういうこと?童顔?ありがとう。
いや違うな。
「いや、まさか。嬉しいけど、今年30歳になるよ、私。」
そういうと、彼は大きくため息をつく。
信じてもらえてないのかなと思い、私も思わずため息をついた。
すると、彼はおもむろに携帯を取り出し、私の写真を撮った。
ーーーーカシャッーーーー
「え、な、なにっ…?」