第7章 魚人島
「グララララ、ネプチューン悪かったな。
菜々美を急に泊めろなんざ言って。」
「構わんのじゃもん。
お主が言い出さんかったらこちらから提案しておったところじゃもん。」
「そうか。それならいいが。」
今日も今日とて巨大な盃で酒を飲み交わす2人。
それを囲むのはただ静かな海だけ。
「じゃが、また急に出立の日を決めるとは。
海賊とは本当にじっとできぬ生き物じゃもん。」
「グララララ、海賊は皆自由に海を彷徨う子供だ!
好きなモンと一緒に好きなように進む。
それだけだ。」
好きなものー家族と共に大海原を駆け巡る海賊白ひげ。
好きなようにー自らの大切なものを守るために突き進む海賊白ひげ。
その誇りは、その信条は誰にも折られぬほどに強く、太く、そして高い。
「…ナワバリが荒らされておると聞いた。
お主、一体何人の命をその身に背負っておるんじゃもん。」
「…知っていたか。
グララ、んなモンいちいち数えちゃいねぇ。
好きでやってんだ。重いと感じたことなんざ一度もねぇよ。」
そう言いながら一息に大杯に注がれた酒を一気に煽る。
「じゃが、珍しいな。
ナワバリが荒らされるとは、、、
お主の島と知ってのことか?」
「さぁな。
だが随分とタチが悪いと聞いてる。」
「…人攫い、か。」
「恐らくな。」
魚人族最大の脅威。
魚人族が人を厭う最大の理由。
ネプチューンは眉を顰める。
「んなシケたツラすんじゃねぇよ。
俺は白ひげだ。」
そう言いながら不敵に笑う白ひげの表情は、誰もを手放しに安心させる力を持っていた。
海神ネプチューンも無意識に肩の力が抜けていく。