第6章 海底10000メートルの楽園へ
「野郎共!魚人島へ向けて、出港だァ!!!!!」
「「「うぉぉぉぉ!!」」」
「オヤジ!浮き袋とエアバック外したぞ!」
「オォ、ナミュール!ご苦労!
さぁ菜々美、しっかり見てろよ?」
『うん?』
父さんは甲板がよく見えるように私をさらに高く掲げた。
すると、みるみるうちにゼリー状の透明な膜が膨らんでいく。
『うわっ!』
「グラララ、大丈夫だ。」
シャボンが父さんの身体も私の身体も包んで行く。
思わず父さんの指をキュッと掴むと父さんは朗らかに笑う。
「沈むぞ!」
『え!』
「グラララ!魚人島は深海だ!」
『あ、そうか。』
シャボンが船をしっかり包むと、ゆっくりと船は沈んでいく。
ドキドキしながら沈んでいく様子を眺めていると、あっという間にマストまで水が来て海の下だ。
『本当に船が沈んでる…』
「どうだ?」
『…夢みたい、、、』
沈まずに海を渡るための船が沈んで行く。
その不思議な感覚と、ドキドキとする心臓が忙しい。
感情が迷子だ。
「菜々美!こっち来いよ!魚見えるぞ!!!」
「グララ、行ってこい。」
『うん…』
未だふわふわとする気持ちと落ち着かない心とで覚束ない足取りのまま、私は声の方へと歩いていった。