第5章 新世界の航海
「野郎共!出港だァ!!!」
「「「うぉぉぉ!!!」」」
父さんの声とみんなの雄叫びとともに、モビーディック号は白い帆を張り、群青の海を駆け抜ける。
目指すは海底の楽園魚人島。
空は快晴、絶好の天候だ。
『速い!もう島があんなに小さく見える!!!』
「だろう?モビーは最強だからな!」
あっという間に春島の海域を抜け、白い鯨は海をひた走る。
「菜々美!向こうでゲームやるらしいぜ。
一緒にこいよ!」
『ゲーム?』
「あぁ。射撃だ!!」
サッチ兄さんに手を引かれて向かった先には銃を構えるイゾウ兄さんはじめとする船員達。
そして少し離れたところには的が用意されている。
「お、菜々美もやるか?
勝ったやつは今日の晩飯にデザートをリクエストできるんだと。」
『え!サッチ兄さんの!?』
「あぁ。なんでも作ってやるぞ。」
『やる!』
私はデザートに釣られてイゾウ兄さんの元に行く。
「よし菜々美、まずはあいつらがやってみせるから見てろよ?」
そう言って船員を指さすとイゾウ兄さんは説明を始めた。
「ルールは単純。
銃は自分の好きなもんをつかっていい。
より真ん中に近いやつが勝ちだ。」
バン!!!
『きゃぁっ!!!』
けたたましい音と共に放たれた弾丸は的の端っこを掠めたようで、打った人は悔しがっている。
それよりも、、、あれ、実弾………
「オイ!実弾使うなって言ったろ!!」
「すんません隊長!!銃間違えちまって、、、」
「ったく、、菜々美が見てる前でんな物騒なもん出すな!」
「はい!…ごめんな、菜々美。」
『あ、いえ、、、』
あれが銃……
私はみんなの手元にあるものが本物の銃だと分かると一気に身震いした。
…海賊だもの。武器くらい慣れないと、、、
「悪いな、菜々美。
…どうする?やめとくか?」
『ううん。私射的得意なの!
やってみる!』
「そうか。じゃあ、菜々美は、、、軽いし音もそんなにデカくない、コイツにしておこう。」
そう言ってイゾウ兄さんは小ぶりなピストルを私に持たせてくれた。
ずっしりとした重さと冷たさが少し怖い。