第15章 第十夜、丑の刻
『んぁ…はっ…ぁ…くぅ、ん』
隙間なく閉ざされた障子の向こうから聞こえてくるカイトにぃの嬌声。
否応なしに腰の奥を刺激するその声から意識を背けつつ、僕たちは互いに目を合わせ、障子に手をかけた。
ゆっくりと隙間を開け、中を覗いてみる。
ロウソクの明かりで 照らされていたのは、でっぷりした腹の 中年オヤジとでも言うべき男と、そいつに組み敷かれたカイトの姿。
うつ伏せのカイトにぃの お尻から背中にかけて、男の腹の肉がのっていて、言いようのないグロい光景が広がっている。
カノセト「「……っ」」
聞こえていた声に、おおよその予想はついていたものの、実際に目にしたことの衝撃で、僕たちはしばらく硬直してしまっていた。
カイトにぃが 豚みたいな男にのしかかられている。
品の無さを 全身から垂れ流しているような男に 好き放題されているというのに、カイトにぃは抵抗どころか、嫌がるそぶりすらしていない。
今だ頭の中が整理できず 某然とする僕たちの口元に、いきなり布が押し当てられた。
カノセト「「むぐッ?!」」
ジタバタともがこうとするも、強い力で引っ張られ、僕たちはそのまま すごい勢いでカイトにぃのいた部屋から遠ざかった。
そしてすぐに、最初に通された部屋へと放り込まれる。
「あんたらねェ、あたしゃちゃんと部屋で待つように伝えたはずなんだがね?」
僕たちの目の前で仁王立ちするのは、キセルを手にした牡丹の柄の着物の女性。
はじめに僕たちと会った女の人だ。
カノ「えーと、ごめんなさい」
セト「すいませんっす」
あまりの眼光に、反射的に謝る僕たち。
すると、その女性は、ふぅー…とキセルの煙を吐いた。