第3章 Empty House
トリエルは、膝を突いて
チリが噴き出ている胸を抑えた。
重い沈黙が流れる。
沈黙を破ったのは、
トリエルの深いため息だった。
*ハァ……。
*貴方は 思ったより
強いのね……。
声が。震えている。
*いいこと……?
時間が止まったように
思考を停止させるPLAYERの耳に、
トリエルの静かな声が降る。
*この 扉を 抜けたら……。
*そのまま ずっと 歩いて
いきなさい。
*やがて 出口が
見えてくる 筈よ。
*……
……。
トリエルの声が、段々
小さくなっていく。
トリエルの声を遠ざけるように
聴覚を鈍らせるPLAYER。
茫然自失のPLAYERを
揺すり起こすように、
トリエルは、声を絞り出した。
*くれぐれも……
アズゴアに タマシイを
奪われないで。
*彼の 思い通りに
させては なりません。
*…… ……。
*いいこで いる の よ。
トリエルの声が、途切れ途切れに、
なっていく。
*… … お ね が い ね。
トリエルは、ほほえんだ。
トリエルを形成していたチリが、
薄れて、散っていく。
取り残されたタマシイが
チリの後を追うように、砕け散った。