第2章 Patience
手摺から身を乗りだす。
向こうに広がる街の全てが、
永らく放置され、荒み切った遺跡群だ。
天井遥かに広がる闇が、
玩具の様な建物の
無機質な配列を覆い隠す。
灯り一つ見えず、活気が無い。
街全体が、死んでいるようだ。
風も吹かず
何も聞こえない。
地中に閉ざされた世界は
空を仰いだところで、
太陽を拝む事など出来ない。
重々しい闇に沈んだ廃城を
ただ、眺めていた。
視界の隅に何かが映った。
遺跡の色に溶け込んだ、紫。
だが確かに、そこにある。
緩やかに歩み寄って、
拾い上げた。
小さな掌で覆えば
簡単に隠してしまえる程の、
小さな小さな武器。
材質はプラスチック。
切っ先に指を這わせた。
刃先は丸く、
ヒトを傷つけるには余りに不向き。
おもちゃのナイフだった。