第14章 犬は吠えるもなき声は影にひそむ
…。
暗い。視界が真っ暗だ。
…ああ、そっか。目を瞑っているだ。
私はゆっくりと重たい瞼を持ち上げる。
カーテンの隙間から少し空が見える。紫がかっていて、どうやらもう夜明けのようだった。
私はゆっくりと体を起こす。チクリとこめかみに痛みが走るが、なんとか耐えて上半身を起き上がらせることができた。そして何があったか思い出した。
…そうだ、夏油傑を呼び出して…そのあと頭が割れそうなくらいに痛くなって、叫んでいたら、喉に何か詰まったように呼吸ができなくなって、意識がなくなったんだった。
隣を見てみると、デスクに突っ伏して寝ている先生がいた。
窓を少し開けると冬風が舞い込んできて寒さに体を震わせた。顔を出した朝日に先生の白い髪が照らされてキラキラと光る。先生は起きる気配はなくてベッドにかけられた毛布を手に取り、それを先生の肩にかけた。
冷たい風に先生の髪がふわりと揺れる。その髪を掬うように撫でて、ぽつりと私は呟く。
「私じゃ代わりになれない。」