第14章 犬は吠えるもなき声は影にひそむ
「チッ…。」
「いいじゃない〜針にしか頼めないし、高専卒業して一人前になった姿先生に見せてっ!!」
一人前か。入学して学生時代は困ったらすぐに先生に頼ってたな。学生時代は2級術師に。卒業する頃には準1級術師になるくらいには独り立ちできるようになった。そうなったのも先生のおかげなのよね…。
しばらく考え込んでいる様子を見て、先生はそれを邪魔することなくニコニコと私を見つめているようだった。
なんだかんだで先生にはお世話になったので、お礼の代わりに引き受けたい……けど、なんだか照れ臭くて嫌がるふりをして返事をした。
嬉しそうに笑う先生からそっぽを向いて私は口を尖らせる。
「成長ね、もう十分見せたと思うけど…。まぁいいわよ。その代わり卒業祝いまだもらってないし、奮発してよね。」
そしてちらりと視線だけ先生の顔に向けると、さっきよりも目を細めて笑っていた。…でもなんだか少し憂いているような……?
私が不思議そうな顔をすると誤魔化すようにまた五条先生は満面の笑みを浮かべた。
「それはもちろん!可愛い生徒の為だからとっておきのものを用意しとくよ。」
どーも、と私は軽くお礼を言ってその場を去ろうとすると、後ろに控えていた乙骨くんはぺこりと一礼した。私もまたそれに微笑んで返してから振り返り、携帯の時計を確認した。もうこんな時間か、急がないと。
…夕方から任務が入っている。1級に上がるためにも実績を作るのでなんだかんだ忙しい。
自分のことで手一杯だった私は後ろに残った2人がしていた会話なんて全く聞こえなかった。
「……なーんで、卒業イコール独り立ちって考えるのかなぁ。上手くいかないもんだね。」
「え…。…え!!?!?」
「憂太には恋愛のノウハウをどうかご教授願いたいもんだね。」
「あれ…でも五条先生、愛ほど歪んだ呪いはないって……。」
「そうだよ、愛ほど歪んだ呪いはない。」
「だから、
______僕の愛も歪んでいるのさ。」