第14章 犬は吠えるもなき声は影にひそむ
「…っ…!!!」
襲いかかる呪霊の手に私は怯んで目をつぶってしまう。…しかし、その手は私に触れることなく呪霊は無様な声を放つ。
恐る恐る目を開けるとそこには長身で白髪の見覚えのある男が立っていた。
「全く、問題児には困ったもんだ。」
「……五条、悟。」
何も考えずにただ気がついたら名前を呼んでいた。自分勝手な理由で嫌っていたその男の名前を。
「おっと、その手には乗らないよ。」
しかし名前を呼んだにも関わらず五条悟は呼出に反応せずむしろ拒否した。呪力は私に跳ね返り一時的に酷い頭痛を起こす。
「いたっ…!?」
「へ〜"呼出"を拒否するとそっちにダメージいくんだ。ま、ちょうどいいお仕置きにはなったかな。」
上から私を見下ろす五条悟はにこにこと気色悪い笑みを浮かべる。私は頭痛の余韻でキーンと耳鳴りが止まず耳を塞ぐ。
私があからさまに嫌そうな顔をして下から五条悟を睨むと、彼はさらに笑って私の頭を沈めるように押し込んだ。
「悪い生徒には五条先生から特別授業をプレゼントしま〜す。明日は必ず学校に来るように!来なかったら実家に強制送還します!!」
耳を塞いでいたから上手く聞き取れなかったけど…学校と強制送還という言葉だけは聞きとれた。
「………はぁ。」
私が小さくため息をつくと、五条悟は急に真顔になって私の目線へ自分の顔を合わせて近づける。私の頭を鷲掴みにしたまま。
「…自分の実力を過信しすぎんなよ。いつか死ぬぞ。」
「…。」
私の頭を掴む五条悟の手が少し力んでいるのがわかる。…怒っているんだ。彼の真剣な姿に初めて遭遇した私の背中はぞくりと震えて彼のいう通り高専へ通うことにした。
「あ、あと僕のことはちゃんと五条せんせーって呼ぶように!」