第14章 犬は吠えるもなき声は影にひそむ
入学当初は学校をサボることが多かった。中学で友達と読んでいた友人たちとは気がつけば疎遠になっていて人間の縁なんてそんなもんなんだと思った。
1人で廃墟を転々としては、家から預かった小型ナイフの呪具を使って雑魚呪霊を祓う。祓って、祓って、ただ無心で祓っていた。
1人なら誰とも話さなくてもいい、会話をしなくてもいい。現実から目を背けるために他人と自分の弱さから目を背けていた。
しかしそんな日も長くは続かなかった。今でも覚えている、あれはまだ夜風が冷たい4月10日のことだった。
「………降ってきた。」
日が暮れてそろそろ帰ろうかとしていた頃に雨がぽつりぽつりと私の頭に落ちた。冷たい。家に帰ったところでやることもないし、先日言った廃墟で雨宿りでもして帰ろう。
しかしそう思ったのが運の尽きだった。
「ぁ………ヒ…ト」
私でもわかる、ダダ漏れの呪力。こいつはこの前相手した雑魚とは違う。おそらく2級…いや下手したら1級に相当する呪霊だ。
相手の呪力に気圧され驚いた私は思わず叫んでしまう。
「っ呪霊!!?!…………っしまった…!!」
"呪霊"と。まだ呪言師としてコントロールが未熟な私の言葉に目の前にいた呪霊が反応してしまい、刹那に私の眼前に現れる。
…っ距離を置かないと!
「……ヒ、ト………ヒトのコドモ…ニクいっ!!!!!」