第14章 犬は吠えるもなき声は影にひそむ
15分ほど経過しただろうか、女子高生と約束した21時まで残り10分もなくなってしまった。仕方なく私はまだ少し痛むお腹を抱えながら名簿を取りに再び地下へ戻った。
「それじゃ、あとはここで、必ず、待っていること。」
女子高生と周辺の一般人にB5Fには間違っても行かないようにと念を押して再び降りてきた階段を上った。
地上へと辿り着いてもなお、未だに静まり返ることはなく人々の喧騒が私の耳へと劈く。
「……っ!」
また、腹痛が…。それにどうしてこんなに心臓が早いの。立ち上がることができない…。疲労だけじゃない、どうして勝手に涙が出てこようとしているの。
パニックに陥りそうな私の頭の中は、おかしくなりそうなほどいろいろな思考が生まれ始めた。
子供に影響が何かあったのか生きているのだろうか産まれてくることはできるのだろうか私自身の身体に問題が体が熱い胸の内から何か込み上げてくるこれは一体なんだ私はこの子は生きることができるのか私はどうすればいい私は私は…。
______プツン。
視界が暗い、瞼が重い。ああ寝ている場合なんかじゃないのに。体が、言うことを…聞いてくれない。
どさりと乾いた音を立てて虚しくも私は冷たい地面に倒れ込む。
…意識が切れる前に最後に頭の中に響いた。
「あなたにとって五条悟とは?」