第13章 黄いろの花はゆれる四のけものは塞がれたむすめのもとへ
「大丈夫だよ、針。針は僕が負けると思ってるの?」
ポロポロと涙を流す私。悟は眉をひそめて笑った。そして私の背に合わせてかがんで、今度はガラスに触れるように頭を撫でた。
悟はまだ知らない、私のお腹の中にいる小さくて尊い命のことを。
少しでも悟がいなくなる可能性がある、そう考えたら居ても立っても居られなくなる。
悟がいなくなって父親を知らないこの子と2人きりで生きていくことを想像するだけで涙が勝手に出てきてしまうのだ。
伝えなくては、今。今伝えないと、そしたらきっと悟は何が何でも戻ってきてくれるのではないだろうか。
私の瞳から溢れる涙を指で掬う先生。私は懸命に首を横に振ってこの涙は単純な不安や心配ではないこと伝えようとする。
「違う、違うの。」
「…?」
案の定悟は不思議そうな顔をして私の頭を撫でる手が止まる。そして降ろされた悟の手を私は両手でぎゅっと掴んだ。
「子供が、いるの。悟との子供、今お腹の中に…。」