第13章 黄いろの花はゆれる四のけものは塞がれたむすめのもとへ
「……悟?」
「ごめん、なんでもない。」
心配して顔を覗くと、悟は強張った笑顔で笑いながら私の頭をいつもより乱暴に撫でた。
悟がこんな顔をする時は決まって夏油傑のことを思い出した時だ。…その時の私はまだ10歳で呪術よりも勉強に夢中になっていたし、悟本人に聞くわけにもいかず当時のことをよく知らない。
けれど悟の怒りや悲しみ、様々な感情が入り混じるなんとも言えない表情を見ると私も耐え難い気持ちになってしまう。
夏油傑は五条悟とどんな関係性で、どんな会話をして、どのように同じ時間を過ごしていたのだろう。
「ん?あれ?」
「え?」
すると突然悟が驚いたような声を上げたので私も釣られて声を上げてしまった。いつのまにか私の後ろに移動していた悟はなんと驚いたことに帳に片手を入れていた。
私は無理で悟が入れる帳。
ここで一つの結論に辿り着く。
狙いは悟だ。
呪霊はこの渋谷駅で何かしらの手段を使い悟を活動不能、もしくは殺そうとしている。
私は気がつけば悟の袖口を引いていた。
「こんなこと言っちゃダメってわかってる。でも、でもダメだよ…。」
そして私の目は熱くなり熱い雫が頬を流れ落ちる。細い細い糸が私の心臓を繋ぐ。一つ間違えればプツンと切れて咽び泣いてしまいそうで、私は精一杯絞り出した小さな声で呟いた。
「いか、ないで……。」