第13章 黄いろの花はゆれる四のけものは塞がれたむすめのもとへ
「はぁ!?妊娠したぁ!?」
「ちょっと!!声が大きい!」
恋人がいる為お互いの家に行くわけにも行かず、かと言って飲食店は匂いがキツイので仕方なく公園に集まりベンチに腰掛けた私と猪野。私が事情を説明すると猪野はそれはそれは大きな声で驚いた。
「相手は…もちろん五条サンだよな?本人にはもう伝えたのか?」
「ううん、まだ…。忙しそうで、なかなか時間合わなくて…。でも1人で抱えてるのもなんか辛くてさ。誰かに話したくて、でも身内とか学生に伝えるの気が引けちゃって、猪野なら話聞いてくれるかなー…なんて。」
「いや、それは全然いいけどよ…。俺あとで五条サンにぶっ飛ばされそうだな〜。僕が先に知りたかった〜とか言ってよ。」
頭の後ろで手を組んでため息を吐く猪野。少し冗談まじりでチラリとこちらを向く。どうやら5年以上の付き合いにもなると考えがお見通しらしい。
「心配すんなって、五条サン絶対ぇ喜んでくれるからよ。」
そう、私は不安になっていた。確かにあの時子供が欲しいと言ったのは悟だが、それでも近頃忙しそうな彼を見ていると迷惑になってしまうのではないかと考えてしまう。けれどこの子の父親は紛れもなく悟で、早く言わないといけない気持ちがごちゃ混ぜになって私の胸を苦しめた。
「ま、またなんかあれば話くらい聞くからよ。ってか、早く五条サンに話してやれよ?あの人ああ見えて嫉妬深いんだぜ?」
そう言ってひらひらと手を振って猪野は去って行った。
なんとこれが昨日、10月30日の昼頃の話。つまり私は妊娠したことを猪野以外の誰に打ち明ける暇もなく帳は降ろされてしまったのだ。