第13章 黄いろの花はゆれる四のけものは塞がれたむすめのもとへ
10月31日、19時。
東急百貨店東急東横店を中心に半径400mの帳が降ろされる。
私たち呪術師は急遽招集を受け、作戦を聞いた後、それぞれの班に分かれるように指示を受けた。
「………針、お前本当に大丈夫かよ。」
「大丈夫…とは言えないけど、私がいないと作戦実行できないしさ。」
それぞれの配置へ移動するその時に同僚である猪野が私に声をかけてきた。私は体のだるさを堪えて無理やり笑顔を作る。
正直言えばあまり動きたくない、今も喉の奥から何かが込み上げてきて吐きそうだ。しかしこの作戦には私が必要だろう、逃げ出すわけにはいかないと深呼吸をした。都会の匂いが体に入り込んで咽せそうになるのをぐっと堪えてふぅと緊張と共に息を吐き出した。
なぜこんなにも体調が悪化しているのか、それは数日前に遡る。
私は体のだるさと熱っぽい体にここ1週間ほど襲われていた。きっと生理前の怠さだから生理が来れば体調が良くなるだろうと呑気にそんなことを考えていた。
しかし本当はうっすら気がついていた。2週間ほど前に起きたあの出来事が私の体調を悪化させているのではないかと。
明日には、明日にはと思っているうちについに予定日は過ぎてしまって私はやっぱり…という気持ちになった。
不運なことに、ここ最近は私が任務の日は悟が休み、悟が任務の日は私が休みなどと時間が噛み合わず、悟は私が夜に眠っている姿しか見ていない為私の様子の変化には気がついていなかった。
検査をすると予想は当たっていて、急に何故だか不安になった私は誰かに打ち明けないと苦しさでどうにかなってしまいそうで、しかし身内に打ち明ける勇気もなく同僚の猪野へと連絡を取った。