第12章 青き蓋はひらき、黄の旗はゆらめいた
伊地知を待っている間、困ったことに針は泣き出してしまいそれはそれは大きな声で泣いていたので僕はどうすればいいか困惑した。
抱っこして上下に軽く揺すってみたり背中をトントンしたり話しかけてみたりしたけれど全く収まる様子はなくて、参ったな…と思っていたところで本日2回目のチャイムが鳴った。ナイスタイミング、伊地知。
伊地知から紙袋を受け取って中身を少し覗いてみると哺乳瓶やミルクの他にもボディクリームなど必要な物を用意してくれている様子だった。
へぇ〜今液体ミルクなんかあるんだ。針が元に戻ったら教えてあげよう。将来的に絶対役に立つからね!もちろん僕との子供ができたときに!
伊地知を帰したあと、泣いている針を抱き抱えながら瓶に液体ミルクを移し替えて針に与えると勢いよく飲み始めた。さっきまであんなに泣いていたのが嘘みたいだ…。
「…って、端から溢れてるじゃん。必死だな〜、可愛いね。」
と自分の言葉に思わずハッとする。気がついたら口元がすごく緩んでいた。全部の行動が必死で可愛く思えちゃうんだよな〜。あ〜…どうしよう子供欲しくなってきた。
この子が本当に僕と針の子だったら、今頃台所で針が洗い物とかしてくれてて、僕は赤ちゃんと一緒にお風呂に入って、赤ちゃんが寝た後は2人でイチャイチャして…。……妄想が膨らむな。
なんて考えているうちにくぴくぴと針のミルクを飲む音が止んだので瓶を確認すると空っぽになっていた。
「全部飲み終わった?じゃあパパとお風呂入ろっか〜」
もうすっかり自分のことをパパと呼ぶのが板についてしまったな、なんて思いながらタオルや先程伊地知に貰ったボディクリームなどを手に取りながら浴室へ向かう。