第12章 青き蓋はひらき、黄の旗はゆらめいた
部屋で溢れかえるそれらのオモチャの中には使い古された物もあるため、恐らくどこかしらの家や玩具屋から呼び出されているのだろうと考えたら頭が痛くなった。
はぁ、とため息を吐いておもちゃに囲まれてご機嫌になった針を抱き抱える。
…よかった泣き出さなくて。もし嫌がられたら心が折れるところだった。
「針。」
キラキラした瞳をこちらに向けて親指を加えている針。名前を呼ぶとキョトンとした顔で首を傾げた。
「…ぱーぱ?」
「!!?!?!!?!?」
なにこの感覚!?なんだろう、愛情っぽくはあるけど、いつも針に向ける愛情とまた違うような…。愛しいのに触れちゃいけない気がする。でも触れたい。不思議な感覚だ。
父親か…。自分が父親になった光景を想像すると少しくすぐったい。でも結婚して針が母親になって僕のことアナタとかパパって呼ぶのは悪くない気がする…。
恐る恐る赤ん坊になった針の手のひらに人差し指を近づけるとぎゅっと握ってくれた。すぐに解けそうで弱々しい力のはずなのに、精一杯の力強さを感じる。
「…ご飯食べよっか。パパが美味し物用意するからね〜!」
なんて少しふざけつつも、けれど満更でもなく僕は針を高々と上に上げてくるくると回った。
「きゃっきゃ!!」
針もまた嬉しそうに笑っていて、ああここに大人の針がいればなぁなんて思ってしまう。
…というかご飯と言ったはいいものの、何食べさせればいいんだろう。スマホでカチカチと1歳ご飯と入力して献立を調べる。