第12章 青き蓋はひらき、黄の旗はゆらめいた
あと少しで閃きそうなところで目が覚めた赤ん坊は突然泣き出した。
「ふぇぇぇぇぇ!!!!!!」
赤ん坊ってこんな大声で泣くの!?僕が驚いていると、赤ん坊を抱き抱えた伊地知は抱き抱えた赤ん坊を優しく揺らしてあやしている。しかし赤ん坊が泣き止むことはなく…。
「あー!!うー!!」
伊地知の顔を蹴り飛ばした。顔を蹴飛ばされた伊地知のメガネがずるりと落ちる。そして疲労困憊な顔をしてがっくりと肩を落としていると、息を吐く間もなく今度は頭の上に熊のでっかいぬいぐるみが現れた。
ん?ぬいぐるみ?…一体どこから。
そんな疑問を浮かべていると赤ん坊はまたあーだのうーだの喋っていた。すると不思議なことに赤ん坊が喋るたびにぬいぐるみが次々と増えていく。
あれ?これってもしかして…………。
こほん、と伊知地はずれた眼鏡を元に戻して咳払いをする。
「……お察しの通り、針さんです。家入さんに治療を頼みましたが時間経過で解決するということで自宅に帰してくれ、と。」
硝子、やりやがったな。
交流会の例の1件以来、硝子はもちろん他の呪術師たちが僕らが恋人同士になったことを周知している。
その中でも特に硝子や伊地知、七海には同棲していることを伝えているので(伝えていると言っても惚気の片手間に話しただけだが。)、遠回しに僕に面倒を見させろと言ったのだ。
でもまぁ、赤ん坊とは言え恋人を誰かと2人きりにさせるのは嫌だしこんな状態と言えど針には変わりはないし…。葛藤しながらも赤ん坊になった針を引き取ったのだが…。
「ぶーぶ!うーう!」
喋り続ける針の言葉全てにに呪言が反応して部屋がオモチャに埋もれてしまったというわけだ。