第12章 青き蓋はひらき、黄の旗はゆらめいた
ある日の五条宅。
「待って、針!!!ほんとに!これ以上もう入らないから!!!」
次々と現れるぬいぐるみ、ミニカー、その他オモチャたち。気がつけば部屋はそれらで埋まってしまいもう足の踏み場が無い。そんな緊急事態を起こしているのは紛れもない僕の恋人である針だった。
一応先に言っておくが喧嘩をして針がヤケになったわけではない。
そう、それは昨夜のことだった。
今日は針だけ任務に出かけていて退屈だな、とソファに寝そべり一口チョコを放り込んだ。するとピンポーンとオートロックのマンションが来客を知らせるチャイムの音が鳴った
…こんな時間に誰だ?とモニターを確認すると、エントランスには困り顔の伊地知が立っていた。
「伊地知?何してんの?」
「緊急事態です!!……とりあえず中に入れていただけませんか?」
心なしか少し声のボリュームを抑えている伊地知。何か様子がおかしいと思いまじまじと観察すると伊地知の両腕には寝息を立てている赤ん坊が抱き抱えられていた。ああ、起こさないようにしているのか。
まぁ事情は後で詳しく聞けばいいかと思い伊地知を待つことにした。数分もしないうちに、扉の前に着いたであろう伊地知がもう一度家のチャイムを鳴らした。一旦伊地知を中に招き入れることにしてお互い向き合う形でソファに座る。
「…で。伊地知結婚してたっけ?隠し子?」
スヤスヤと寝息を立てている赤ん坊をまじまじと見つめて問いかけると伊地知は顔を横にブンブンと振った。そしてとんでもないことを口走る。
「いえ…どちらかというと五条さんの隠し子と言いますか……。」
「は?」
何言ってんだこいつ?一瞬殴ってやろうかとも思ったが殴った拍子に赤ん坊が落っこちてはいけないと思いやめた。
それにしても、僕の隠し子?いやいやそんなバカな。針が僕との子供できていたら産まれるにはまだ時期が早いだろうし…。まさか他の女?いやいやいや、それなら女本人が来るだろ。
この赤ん坊も1歳くらいだし、針が高専卒業してからはそういうことしてないし時系列が合わない。
でもこの赤ん坊どっかで見覚えが…。