第11章 繋ぎの風は捕らわれ影はひそむ
「針!!!!!!」
勢いよく開いたせいで跳ね返った引き戸の扉がトンッと鳴る。その音と同時に私は訪問人に視線をやった。
「あ、えっと………」
先程の会話のこともあって思わず先生と呼びそうになったのと、それから怪我をしたのにも関わらず隠してしまった後ろめたさから言葉が出なかった。
猪野はというと心配そうな顔をした悟と入れ違いで、じゃあごゆっくり〜なんて聞こえるか聞こえないかとてもとても小さい声で言って、フルーツバスケットをテーブルに置いて部屋から出て行ってしまった。
私が原因だけれど、その気まずさから私は布団に置いていたりんごを両手で包んで、視線をそこに落としながらくるくると回して手遊びをする。
どうしよう、悟と目合わせられない。
私が戸惑っていると悟はこれまで見たこともないような悲しい顔で私を強く抱きしめた。胸が締め付けられて少し痛んだ。痛んだ胸は怪我が痛かったのかそれとも悲しそうな悟を見て痛んだのかどちらかはわからない。
「よかった………」
なんとか絞り出したであろう消えそうな悟の声がもっと私の胸を苦しくさせて、逆に私が泣いてしまった。
「ごめん、なさい……」
「家に帰って来ないから心配したよ。いくら待っても君が帰って来ないから、硝子に連絡したんだ。……無事でよかった。すぐに迎えに来れなくてごめん。」
悟が本気で謝るところを初めて見た私はもっともっと胸が締め付けられて、ぎゅっと悟を抱きしめ返した。
「私が硝子さんに隠してって言ったの、だから……」
「そうか…だから伊地知の報告に針の名前がなかったのか……。」