第11章 繋ぎの風は捕らわれ影はひそむ
それからお互い交流会で何が起きたのか抱き合いながらポツリポツリと伝え合った。宿儺の指や九相図が盗み出されたこと、それは例の継ぎ接ぎの特急呪霊の仕業であること。
私の話を聞きながら悟はうん、そっか、大変だったね、と時折私を抱きしめる腕の力が強まりながら相槌を打ってくれた。
しかし悪いことばかりではない。話しているうちにいつもの調子に戻ってきた悟は、悠仁くんが黒閃を打ったことや交流会で野球をして勝ったことなど話してくれた。次第に私も元気が出てきてお互いに笑顔が戻る。
今日は秋晴れで青空が窓から見える。心地よい気温に心地よい空間。そして大切な人。なんだかこの時間がとても愛しくて尊く感じた。
「……悟。」
「ん?」
私が名前を呼ぶと、私の背中に回していた腕を解いて嬉しそうに私を見つめる悟。私もまた彼を見つめる。そしてゆっくり近づいて首に手を回し、口付けた。
「…ずっとこんな時間が続けばいいのに。」
「そうだね、僕もそう思うよ。」
同じく悟も私に口付ける。今までで1番優しくて、そして甘いキスだった。この時は本当にずっとこんな時間が続くなんて呑気なことを考えていた。
私は見て見ぬフリをしたのだ。これから起きる悲劇のことを。
本当にこの時間がずっと続けばよかったのに。