第11章 繋ぎの風は捕らわれ影はひそむ
「……どうして、帰ってないのかしら…。」
私がそう言って睨みつけると、キョトンと不思議そうな顔をしたやつは不気味な笑みを浮かべて口を開く。
「忘れ物。…あ、帰るには帰るよ?ただちょっとおつかい頼まれててさ。」
そうして奴は足が動かなくなった私を置いて敷地の奥へと進んでいく。
「待てっ…!!"霧雨"1本!!!」
歩き去っていく奴の背中にナイフを打ち込むが虚しくも簡単に弾かれてしまう。そして弾いたナイフを拾い上げて奴はそのナイフをじっと見つめた。
「君自身は気づいていないみたいだけど、君がその呼び出したものたちは君の魂の残留、って言ったらいいのかな。それが残っているんだよ。時間が経てば消えるっぽいんだけど、これは呼び出したばかりだから、こうやって魂の繋がりを辿れば…。」
「…っ!!?!?…ガハッ……」
肺部分に電流が走ったような痛みが走る。そして喉から血液が込み上がり、口から血を吐き出した。どくどくと心臓が脈打ち、体が必死に酸素を得ようとする。
「まぁ魂の残留辿るくらいじゃ俺もこのくらいが限界なんだけど。…じゃ、もう時間ないから行くね。」
「待っ………て…」
意識が遠のく。足が動かない、息が思ったように吸えない、吐こうとすれば代わりに血がドバドバの出てくる。苦しい。……苦しい。私は死んでしまうのだろうか。瞼が上がらなくなってきた。
手を握ることすら出来なくなり、私は地面に自分の体を委ねた。そして、ひらひらの手を振る奴の姿を最後に私の視界は真っ暗になった。